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東京高等裁判所 昭和60年(う)1549号 判決

被告人 金成秀夫

昭三〇・九・一一生 自動車運転手

主文

本件控訴を棄却する。

当審における未決勾留日数中八〇日を原判決の本刑に算入する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人仲田信範作成名義の控訴趣意書に、これに対する答弁は、検察官三ツ木健益作成名義の答弁書に記載されているとおりであるから、これらを引用する。

一、不法に公訴を受理した違法あるいは訴訟手続の法令違反をいう控訴趣意について

所論は、本件任意同行及び所持品検査の際に警察官が被告人に対してとつた一連の措置は令状によらない逮捕、身体検査及び差押の実質を有する違法な強制捜査であり、とりわけ本件所持品検査の際に被告人が口中に入れた本件覚せい剤を被告人の口中から無理矢理取り出すために警察官がとつた措置は、憲法三五条及びこれを受ける刑訴法二一八条一項の所期する令状主義の精神を没却した重大な違法があり、これを証拠として許容することは将来における違法な捜査の抑制の見地からしても相当ではないというべきであるから、押収にかかる本件覚せい剤のみならず、これに続く違法な採尿、取調にかかるところの被告人の尿及び被告人の自白調書、ならびに本件覚せい剤や被告人の尿に関する各鑑定書も、すべていわゆる違法収集証拠にあたり証拠能力を有しない、したがつて、これらの証拠にもとづく本件起訴は無効であり刑訴法三三八条四号により公訴棄却の判決がなされるべきであつたし、仮にそうでないとしても、これらの証拠を排斥したうえ被告人に対し無罪の判決がなされるべきであつたのに、原審は実体審理を進めてこれらの証拠を採用したうえ、これらの証拠に依拠して被告人に対して有罪判決をしているのであるから、原判決には、刑訴法三七八条の不法に公訴を受理した違反あるいは判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある、というのである。

しかしながら、本件任意同行の一連の過程(弁護人は、本件任意同行の際の一連の状況について、原判決に種々の事実誤認があると主張するが、原判決の認定するところは原判決挙示の関係各証拠により優にこれを肯認できるのであつて、被告人の捜査段階及び原審公判廷における各供述中右主張に添う各供述部分はこれらの関係各証拠に照らして措信できず、したがつて、右主張は採用できない。)において、警察官が被告人に対し直接何らの有形的実力や心理的強制を加えておらず、したがつて本件任意同行に違法がないことは原判決の説示するとおりである(弁護人は、本件任意同行を被告人に求めるにあたり、警察官が被告人に対し駐車違反の件のみを告げ、実際はその解明こそが本件任意同行を求める警察官のもつぱらのねらいであつた覚せい剤事犯の容疑を被告人に告げなかつたことをとらえて偽計、詐術ともいうべき不公正なやり方であり、この点からしても本件任意同行は違法であると主張する。たしかに警察官が被告人に対し本件任意同行を求めるにあたり、覚せい剤事犯の容疑解明のための任意同行であることを被告人に告知していないことは弁護人の主張するとおりであるが、当時の諸事情にかんがみれば、右容疑はかなりのものであつて任意同行を求めるに十分なものがあつたというべきであるけれども、警察官としては被告人に容疑として告知しうるだけの、これを裏付ける何らの客観的な証拠をつかんでいたわけではなく、その意味で右容疑は未だ警察官の内面における主観的なものにとどまつていたにすぎなかつたこと、これに反し、警察官が告知した駐車違反の件は、現行犯としてすでに容疑も明白になつており、また、この件のみでも任意同行を求めるに十分なものであつたことや原判決の指摘するその余の事情に徴すると、警察官のこの点の措置に偽計あるいは欺罔という色彩があつたとは到底認められず、右主張は採用できない。)し、また、所持品検査の最中に被告人が突然本件覚せい剤を口中に入れ、その隠匿を図つたのに対し、警察官が原判示のような手段、方法によりこれを制止する行動をとつた点も、原審で取り調べた関係各証拠によつて認められるところのその具体的態様(原判決の認定するとおりであつて、被告人の原審公判廷における供述中これに反する供述部分はその余の関係各証拠に照らして信用できない。)に照らすとき、当時における被告人の一連の具体的行動状況により窺われる本件所持品検査の必要性、緊急性、容疑事実の軽重、濃淡、かかる一連の制止行為により得られる公共の利益とこれによつて失われる被告人の利益(プライバシー)との権衡、被告人自身の生命、健康の保護の必要性などを総合的に考察するかぎり、右の制止行為は、被告人の所持品隠匿行為を制止するために必要にして最小限度の有形力の行使であつて、社会的にもその妥当性を是認しうるものであり、いまだ実質的な捜索と目すべき強制の程度にはいたつていないと認めるのが相当であり、何ら違法とはいえない(その詳細は原判決が説示しているとおりである。)から、所論は、その余の弁護人の主張につき按ずるまでもなく、その前提を欠き、排斥を免れない。論旨は理由がない。

二、量刑不当をいう控訴趣意について

所論は、被告人に対する原判決の量刑が不当に重い、というのである。

そこで、原裁判所が取り調べた証拠を調査し、当審における事実の取調べの結果を参しやくして検討すると、被告人は、昭和五九年五月に覚せい剤取締法違反の罪で懲役一年、執行猶予三年に処せられたのに、昭和六〇年三月ころから再び覚せい剤を使用するようになり、その一環として右執行猶予期間中に原判示の各所為に及んだものであつて、犯情はよくなく、被告人の罪責には軽視しがたいものがあるというべきであるから、被告人の父親や妻が今後は被告人を十分に監督しこのような過ちはくりかえさせないと述べていることとか、被告人の妻の精神状態、健康状態を含む被告人の家庭の事情など所論指摘の点を含めて被告人のため酌むべき事情一切を十分に考慮しても、被告人を懲役一年四月に処した原判決の量刑はやむをえないところと思料され、重過ぎて不当であるとはいえない。論旨は理由がない。

よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却し、当審における未決勾留日数の算入につき刑法二一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 時國康夫 礒邉衛 日比幹夫)

参考 (第一審判決)

主文

被告人を懲役一年四月に処する。

未決勾留日数中五〇日を右刑に算入する。

押収してある覚せい剤一袋(昭和六〇年押第一一八九号の一)を没収する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、いずれも法定の除外事由がないのに

第一 昭和六〇年六月一四日ころ、東京都品川区平塚一丁目一一番九号田中アパート一号室森谷健次方において、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン約〇・〇二グラムを含有する水溶液約〇・一立方センチメートルを自己の右腕に注射し、もつて、覚せい剤を使用し

第二 同年六月一四日、同都同区荏原六丁目一九番一〇号警視庁荏原警察署において、覚せい剤である塩酸フエニルメチルアミノプロパンの結晶約〇・〇七四グラムを所持したものである。

(証拠の標目)(略)

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、本件任意同行及び所持品検査の際警察官が被告人の口中から覚せい剤を取り出すためにとつた措置は、いずれも令状によらない逮捕、身体検査及び差押えの実質を有する違法な強制捜査であるから、これに続く逮捕、覚せい剤の差押え、採尿、勾留及び被告人の取調べはいずれも違法であり、したがつて、押収にかかる覚せい剤、被告人の尿、これらにかかる鑑定書及び被告人の自供調書はいずれも違法収集証拠ないしはその違法性を引き継ぐものであつて、証拠能力を有しないから、これらの証拠に基づく検察官の本件起訴は無効であり、刑事訴訟法三三八条四号に基づき公訴棄却の判決がなされるべきであり、仮にそうでないとしても、被告人は無罪である旨主張する。

そこで、検討すると、前掲各証拠を総合すると、次の事実を認めることができる。

警視庁荏原警察署勤務巡査部長橋本及び警察署勤務巡査秋山ほか一名が昭和六〇年六月一四日午後五時一〇分ころパトカーに乗務して東京都品川区荏原三丁目の武蔵小山商店街裏にある駐車禁止となつている幅員約三・五メートルの一方通行の道路にさしかかつたところ、軽四輪自動車が駐車し、助手席に一人の男が乗車していたので、その者に対しいわゆる職務質問を行つた。その男は氏名を森谷健次と言い、遊び人風で顔色青白く、唇は乾いた感じで、六月の中旬にもなつているというのに長袖のトレーナーを着ており、犯歴照会を行うと、昭和五九年ころ覚せい剤取締法違反罪で検挙された前歴を有することが判明した。また、同所付近には、覚せい剤を扱つているのではないかと思われる暴力団組員宅もあつたので、右警察官らは右森谷が覚せい剤を使用しているのではないかとの疑いを抱いた。警察官らが被告人車を発見してから約二〇分経過後、被告人が車に戻つてきたので、運転免許証の提示を求めたうえ、犯歴照会を行うと、被告人にも昭和五九年春ころ同法違反罪で検挙された前歴のあることが判明した。そして、犯歴照会をしたころから被告人の態度がそわそわと落着きがなくなり、前記場所柄や覚せい剤を使用しているのではないかと思われる森谷と同じ車に乗車していることも合わせて判断すると、被告人もあるいは覚せい剤を使用しているか所持しているのではないか、との疑いが生じた。ところで、警察官らが被告人らに職務質問を開始した時刻ころは、夕方の、人、車の通行が多くなる時間帯であり、狭い同所に二台の車を停めて職務質問を続行することは、交通の妨害となるし、被告人らを通行人の好奇の目にさらすことにもなりかねなかつた。そこで、右警察官らは、同警察署勤務警部補小松警ら係長からの指示もあつたので、被告人と森谷を同所から車で数分の距離にある同警察署に任意同行することとした。警察官らが被告人らに任意同行を求める本来の意図は、被告人らに対し覚せい剤取締法違反の有無について職務質問を徹底して行うことにあつたが、橋本巡査部長らは故意にこの意図は伏せ、ただ、駐車違反の関係で同警察署まで来てもらいたい、とのみ告げた。しかし、被告人は任意同行を求める警察官らの本来の意図を察知し、なるべく任意同行には応じたくない気持であつた。そこで、妻の身体の具合が悪いので、このまま帰らせて欲しい、とか、これから父の仕事の手伝いにも行かなければならない、などと言つて、警察官からの任意同行要求を婉曲に断わろうと試みたが、右橋本らから、署に着いたら、すぐ電話をさせるから、とか、時間もそう取らせないから、などと言われると、同行を断る理由もなくなり、仕方なく任意同行要求に応ずることとした。被告人が、道順がわからない、というと、橋本巡査部長が被告人車の後部座席に乗り込んで来て、運転する被告人に道順を指示し、同日午後五時四〇分ないし四五分ころ同警察署に到着した。同巡査部長らは、被告人と森谷を同警察署二階の保安係の部屋に同行し、同人を取調室に待機させ、まず、被告人に対し改めて職務質問を開始することとした。被告人に対する職務質問は小松警部補が中心になつて行い、保安係の赤羽巡査部長、前記パトカーに乗務していた橋本巡査部長ほか二名がこれに立会つた。被告人に自宅に電話させるなどしたのち、小松警部補も被告人も立つたままで、同警部補が被告人に、もう覚せい剤はやつていないか、などと尋ねながら、セカンドバツグを見せるよう求め、被告人の承諾のもとに内容物を改めたが、何も問題のあるものは発見されなかつた。次に、同警部補が被告人に対し、ポケツト内のものを出して見せるよう要求したところ、被告人が黒色の財布をズボンの左ポケツトから取り出し、チヤツクを開いてビニール袋様のものを取り出すや否や、それを口中に入れた。同警部補らは、被告人の前歴やこれに至る経過から、被告人が口中に入れたものは覚せい剤であり、被告人はこれを嚥下しようとしているのではないか、と考えた。そこで、同警部補はこれを制止するため、とつさに右掌を被告人のうしろ首ないし肩のあたりにまわし、左掌を被告人の顎のあたりに持つていつたが、二人ともはずみで仰むきに転倒してしまつた。これを見た秋山巡査が被告人の両腕を押さえ、橋本巡査部長が両足を押さえて被告人の動きを制し、同警部補が被告人の鼻をつまんで被告人に口を開かせようとするなどした。赤羽巡査部長は、それが覚せい剤なら、飲み込んだりすると死んでしまうぞ、などと言つて、吐き出すよう説得した。およそ数分間、そのようにしてもみ合つているうちに、被告人が口中からビニール袋を吐き出したので、同巡査部長が、それを拾い上げ、これは何だ、と尋ねると、被告人は、それは覚せい剤であり、森谷から預つているものである旨答えた。また、被告人は、泣きながら、覚せい剤はやめようと思つたが、やめられなかつた、などと言い、これ以上所持品を隠すのはあきらめた様子で、もはや同巡査部長に対し、拾い上げたものを直ちに返還するよう求めるようなことはなかつた。そこで、同巡査部長が試薬により前記ビニール袋の内容物のテストを行つたところ、覚せい剤反応があらわれたので、被告人を覚せい剤所持の現行犯人として逮捕し、この覚せい剤を押収した。右もみ合いの結果、被告人は小鼻のあたりが赤くなり、首が痛くなつたりしたが、いずれも医師の診察治療を必要とするほどのものではなかつた。

右事実経過によれば、被告人が駐車違反及び覚せい剤取締法違反を犯している疑いがあり、かつ、警察官らが当初職務質問を開始した路上で職務質問を続行することは、交通の妨害となり、また、被告人本人に不利であつたということができるから、警察官らが、更に職務質問を行うため、近くにある荏原警察署への同行を求めた措置は、警察官職務執行法二条一、二項に従つたものとしてこれを是認することができる。そして、被告人は、警察官の同行要求に応じ、自ら車を運転して同警察署に赴いているのであつて、同行にあたり警察官が被告人に対し直接実力や心理的強制力を加えたような事実はなく、橋本巡査部長が被告人の車に乗り込んだのも、被告人が同警察署への道順を知らないと言つたからであり、同巡査部長が、被告人の抵抗を排除して乗車し、降車要求にも応ぜず、同警察署に向かうことを強要したような事実は全くなかつたのであるから、任意同行の過程にも同法二条三項にいうような強制連行の廉はない。なお、警察官らが被告人に任意同行を求めた際に、その理由として、ことさら駐車違反の件のみを告げ、覚せい剤の件については言及しなかつた点について考えてみると、警察官が任意同行を求める方法として、警察官職務執行法二条三項が明文をもつて否定しているところの、身柄の拘束や意に反する連行が許されないことは勿論であるが、それ以外の方法であればどのような方法であつても許容されるというものではなく、偽計による任意同行など著しく不公正な方法によることも許されない、というべきであるけれども、本件の場合、警察官は同行を求める本来の目的を告げなかつただけで、積極的に虚偽を述べたものではないこと、警察官が同行を求める理由として告げた駐車違反の件だけでなく、告げなかつた覚せい剤取締法違反の関係でも任意同行を求めうる要件は存したこと、被告人の方でも、自己が単に駐車違反の件のみで同行を求められているのではなく、覚せい剤の関係でも同行を求められていることを察知しており、したがつて、警察官による前記のような同行目的についての説明がなかつたならば、被告人は任意同行には応ぜず、警察署には赴かなかつたとまでは認められないこと、それに、そもそも警察官が任意同行を求める際、必ずしも相手方にその理由・目的を告げなければならないものでもないと解されることなどに鑑みると、本件で警察官らがした同行を求める目的の説明の仕方が若干詐術的色彩を帯びていたことは否定できないとしても、それは未だ本件任意同行を違法たらしめるほどのものではない、というべきである。

次に、被告人がビニール袋様のものを口中に入れた際に警察官らがとつた措置の当否について考えてみると、警察官職務執行法二条一項に基づく職務質問に付随して行う所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、警察官の方から一方的に実力を行使して捜索、強制にわたるような行為に出ることは許されないけれども、所持品検査の最中に所持人が所持品を湮滅するような積極的行動に出、これを放置したときには、のちに当該所持品の検査を行い職務質問の実効をあげることが不可能ないし著しく困難となる虞れがあるような場合には、右事態の緊急性のほか、当該所持品検査の必要性、容疑事実の軽重・濃淡、所持品検査によつて得られる公共の利益とこれによつて失われる所持人の利益との権衡などを考慮し、所持品湮滅行為の態様・程度に応じ必要な実力を行使してこれを制止することができることがあるといわなければならない。そこで、これを本件について見ると、被告人の前歴や被告人がビニール袋様のものを口中に入れるまでの前記経過から判断すると、被告人が口中に入れたものが覚せい剤である疑いはかなり濃く、放置しておいたのでは、これを嚥下されてしまい、所持品検査、ひいては職務質問の実をあげられなくなる虞れが大であつた一方、被告人は警察官らの面前でビニール袋様のものを財布から取り出して口中に入れる行為により自らその物にかかるプライヴアシーを半ば喪失させたというべきであり、したがつて、その物にかかる被告人の保護されるべきプライヴアシーの利益はかなり矯小化したと見られるのであり、かつ、被告人が口中に入れたものが覚せい剤であり、これを嚥下した場合には、その量如何によつては、被告人の生命・健康が損われる虞れもあつたことなどを総合勘案すれば、警察官らには、被告人がビニール袋様のものを口中に入れ、これを嚥下する行為を実力を行使して制止する権限があつたというべきである。そして、警察官らがした実力行使の目的は、被告人が行つた所持品湮滅行為を制止することに尽きていたのであつて、更に進んで被告人の身体検査ないし捜索まで企図したものではなく、実力行使の態様・程度も、被告人が覚せい剤の入つた包みを吐き出すまでの数分間、被告人の顎や手足などを押さえ、鼻をつまんだりしたという程度のものだつたのであるから、前記被告人の湮滅行為を制止するために必要かつ相当な限度内にとどまつていたということができる。なお、被告人が当公判廷で供述するところでは、被告人は警察官から喉も圧迫され、呼吸が苦しかつたとのことであるが、仮にそのようなことがあつたとしても、前記被告人の行つた湮滅行為の態様に照らすと、これもまた必要かつ相当な限度内にとどまつていた、ということができる。このように、被告人が覚せい剤の入つたビニール袋を口中に入れた際に警察官らがとつた措置は、職務質問に付随して行う所持品検査にあたり、所持品湮滅行為を制止するために行つた実力行使としてこれを是認することができ、これを令状によらない身体検査及び差押えとする弁護人の批難は失当である。

以上のとおり、警察官による本件職務質問、任意同行、所持品検査及びその過程でなされた実力行使はいずれも適法なものとしてこれを是認することができるから、これらが違法なものであることを前提とする弁護人の主張はいずれも採用できない。

(法令の適用)

一 罰条

判示第一の所為

覚せい剤取締法四一条の二第一項三号、一九条

判示第二の所為

同法四一条の二第一項一号、一四条一項

一 併合加重      刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に加重)

一 未決勾留日数の算入 刑法二一条

一 没収        覚せい剤取締法四一条の六本文

一 訴訟費用      刑事訴訟法一八一条一項本文

(裁判官 浜井一夫)

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